京の都は南の僅かな空間を除いてグルっと山に囲まれています。
そんな山々を巡る「京都一周トレイル」について初めて聞いたのは2年ほど前です。
今回、ご縁があって南アフリカからやってきた二人のサンティアゴ巡礼経験者と歩き旅の師匠”ミヤジマさん”との四人でこの84㎞におよぶトレイルを歩くことになりました。
京都トレイルについて
京都一周トレイル®は、京都の東南、伏見桃山から、比叡山、大原、鞍馬を経て、高雄、嵐山、苔寺に至る全長約84キロのコースです。(京都観光オフィシャルサイト、京都観光NAVIより)
別途、京北地域をめぐる全長約48.7㎞のコースもありますが、今回は伏見桃山から上桂までを歩きました。
公式ガイドマップでは東山コース、北山東部コース、北山西部コースそして西山コースの4つに分かれていますが、このコースを6日間かけて歩きました。
1日目 伏見桃山から蹴上 19.4km
2日目 蹴上から比叡山 14.7km
3日目 比叡山から大原寺戸町 9.6km
4日目 大原寺戸町から二ノ瀬 11.4km
5日目 二ノ瀬から高雄橋 約16km
6日目 高雄橋から上桂 19.2km
距離数はいずれもYAMAPのログを採用しています。また5日目の二ノ瀬から高雄橋はログを止めずにバスに飛び乗ったため、おおよそ距離になります。
計画策定について
南アフリカから来日した二人のリクエストは「紅葉の時期に京都一周トレイルを歩きたい」というものでした。当初は10月下旬に来日する予定でしたが、紅葉の時期を鑑みて2週間延期し、11月8日から歩き始めることになりました。
山歩きを想定して、1日の歩行距離が20㎞を越えないように、また日没も早くなるので16時前にはゴール地点に着くように計画しました。
比叡山から大原寺戸町までは9.6kmと短くなっていますが、南アフリカのお二人は来日翌日から移動しているため、この日は距離を短くして休養または希望があれば観光などができるように余裕のある予定を組みました。
宿泊場所の選定
京都トレイルは京都市内を拠点にして回ることができます。拠点から出発点に向かい、ゴールしたらまた拠点に戻る。翌日は前日のゴール地点まで行き、そこから再スタートをする、という繰り返しです。
当初は来日するお二人から具体的な京都町家風のゲストハウスのリクエストがありましたが、日程の内の2日間がゲストハウスのお休み日となっていたため断念しました。
また、当初は5人宿泊する予定でしたのでAirbnbで一軒家を借りることにしました。(結局は4人になりました。)3泊目は比叡山の宿坊を予約しましたが、その間も一軒家は借りたままにし、荷物などを置けるようにしました。
京都一周トレイル
このトレイルの魅力は、伏見稲荷神社や比叡山、嵐山などの観光地もあれば、少し寄り道をすれば清水寺、大文字山、南禅寺、大原三千院、鞍馬寺など見どころはたくさんあります。また、静かな京都の住宅街を歩くこともできます。そしてなんといっても京都を囲む山々を巡って京都の町を上から眺め、その様々な表情を見ることができます。多彩なトレイルです。
今回寄り道したのは鞍馬寺だけでしたが、ルートの組み方は千差万別です。トレイルルートにこだわらなければ、京都一周トレイルをベースにした自分だけのオリジナルルートが楽しめそうです。


標識に悩まされる
東山コース、北山東部コース、北山西部コース、西山コースとそれぞれにルートマップも道標もありますが、この一周コースを時計回りに回る人もいれば反時計回りに回る人、途中から回る人もいるため、どちらの方面からも見られる道標になっています。また道標の場所もどちらからも見られる位置にあるので、逆に時には分かり難い場所にある事も否めません。どの方面から来て、どの方面に向かっているのかをきっちりと把握していないと迷うことになります。見るコツをつかまなければなりません。
今回は京都市産業観光局観光MICE推進室発行の京都一周トレイルマップとYAMAP、そして道標の3つを突き合わせながら歩きましたが、完全に迷ったのが1か所、また標識の見落としが何か所かありました。


最大のピンチ
6日間のうち、天候が悪かったのは1日だけでしたが、その1日が一番の難所、蹴上から比叡山のルートの日でした。
雨の中、標識を見落とすことなく進んでいたのですが、急な階段を下った後で両端が尖った”京都一周トレイル”の看板があり、下ったはずの所をまた登り返すかのように感じられました。疑問に思いながらも登り返すと先ほどの場所に戻ってしまったのです。
地図とYAMAPを見比べて喧々諤々の議論をしているところに、それまで誰にも会わなかったルートにトレランの方が通りかかりました。聞いてみると、兎に角下って、更に下るのがルートと教えてくれました。一度下った急階段を再び下り、その先を更に下ってみると道標が現れました。
サンティアゴ巡礼ではこのようにピンチの時に忽然と現れて助けてくれる人を”camino angel”と呼んでいます。京都にも”camino angel”出現です。
更にピンチは続きます。
ここからの頼りはYAMAPアプリです。山の中で雨が強くなったためスマートフォンが濡れないようにビールに入れたのですが、徐々に濡れてしまいました。
そして充電が切れる前にモバイルバッテリーに繋いだ途端に「液体を検出しました!」の警告が出てしまい充電ができませんでした。
バッテリーの残量はまだ少しありましたがまだ山の中です。充電を諦め、写真も控えてバッテリーの消費を抑えることにしました。この後三度の渡渉を経て、坂を上ってケーブル比叡駅が見えた時はホッとしました。
ケーブル比叡駅の駅舎待合室ではストーブが焚かれていました。飲み物の自販機もありました。濡れた雨具を一旦脱いで、温かい飲み物を飲んで一息いれることができました。


京都の秋を山から満喫
比叡山や鞍馬寺の紅葉も見事でしたが、山を歩いているとあちらこちらで秋を感じます。鳴滝沢の沢の池はひっそりと訪れる人もなく、水面に映る緑と紅葉は見とれるほどの美しさでした。
また高雄橋からの川沿いの萌えるような紅葉も見事でした。
しかし、これらのルートはどの季節でもきっとそれぞれの美しい表情を見せてくれると思います。新緑の季節、花の季節、光眩しい濃緑の頃、そして空気が澄んだ真冬でもきっと美しいと思えるルートです。


比叡山宿坊に泊る
トレイル期間中は京都市内にゲストハウスを借りましたが、3日目は比叡山にある延暦寺会館の宿坊に泊りました。雨の中で到着したのが15時半ごろです。16時から座禅の組み方などの講習会に参加できます。(希望者のみ)そして、17時30分ごろから精進料理の夕食です。
翌朝には根本中堂で勤行に参加することができます。
希望者は、前日の夜に座禅や写経をすることもできますし、朝の勤行と朝食後にお坊様の講話を伺う事も出来ます。
部屋からはキラキラ光る夜景が見えていましたが、翌朝、部屋の窓からは朝焼けを映し出す美しい琵琶湖と周囲の街が一望できました。
私達一行は、翌日は比叡山山頂のトレイルルートには向かわず、宿坊のある東塔から西塔の釈迦堂まで苑内を歩きトレイルに復帰しました。
ルートからは外れましたが、お堂などを巡りながらゆっくりと歩くことができました。因みに、この比叡山延暦寺内は東海自然歩道になっています。
京都市内のゲストハウス
先に記載したように、今回はAirbnbを使って市内に一軒家を7日間借りました。
ゲストハウスはは2.5DKの戸建てで二条城にほど近い物件でした。宿泊費は6泊7日で一人あたり40,623円でした。
家の中はとてもきれいに整えられており、キッチンには冷蔵庫、トースター、電子レンジ、電気ポットそして食器やカトラリーが完備。調味料なども最小限ですが揃っています。
お風呂・シャワー、洗濯機もありましたし、お風呂場は乾燥室になっています。また洗剤も置いてあるものでよければ使ってよいということでした。
お風呂は小さなユニットバスで、使用に支障はありませんでしたが、事前に調べたところ近くに銭湯があったので、5日間銭湯に通いました。何種類かの湯舟とジェットバス、露天風呂などがありリラックスできる銭湯でした。
近くにはコンビニが数件、スーパーマーケットも徒歩圏にあり、良かったのは美味しいパン屋さんが何件かあったことです。
また、洗濯はゲストハウスでできますが、翌日のために乾燥したいときにはコインランドリーも近くにあり便利でした。
トレイルから戻って、自由度の高い自分たちのスペースがあるのはよかったと思います。
当初はハードルが高いと思っていた京都トレイルですが、紅葉の季節を楽しみながら4人で歩ききることができました。貴重な体験だったと思います。
個人的には、もう一度蹴上から比叡山まで、お天気の良い日に歩いてみたいと思っています。




今回の動画をInstagramに掲載しています。そちらもご覧いただければ幸いです。 Kyoto Trail ①、Kyoto Trail ②、Kyoto Trail ③、Kyoto Trail ④、Kyoto Trail ⑤、Kyoto Trail ⑥

