東海自然歩道 ④

歩き旅

近鉄奈良駅から柳生

昨年11月に室生から長谷寺までの道を途中断念しましたが、今回は近鉄奈良駅から柳生までを歩きました。行かれれば、笠置駅をゴールとしたいと思って歩き始めました。

行程 20.7km、7時間26分

近鉄奈良駅 → 春日大社 → 上の禰宜道 → 夕日観音 → 朝日観音 → 首切り地蔵 → 誓多林集落 → 峠の茶屋 → 忍辱山 → 円成寺 → 夜支布山口神社 → 大柳生の集落 → 南明寺 → 阪原峠 → ほうそう地蔵 → 柳生陣屋跡 → 家老屋敷 → 柳生バス停

奈良市内の近鉄奈良駅近辺に宿泊したため、当日は7時半過ぎから歩き始め、8時には柳生街道に入りました。お天気は曇りのため暑さも和らいでいました。また、バックパックも当日必要な物だけを入れて歩きましたが、暑くなることも想定して水分は1.5L用意しました。

東海自然歩道のこの区間は、区間ごとに呼び名があります。春日大社にも本殿から若宮に向かう道は「上の禰宜道(かみのねぎみち)」と呼ばれ、柳生街道に入ってから円成寺までは「滝坂の道」と書いてありました。また、円成寺の先の忍辱山バス停から柳生バス停までは「剣豪の里コース」と名付けられているようですが、いずれも東海自然歩道の一部になっています。

近鉄奈良駅から春日大社までは大道り沿いを歩き、春日大社内は若宮から上の禰宜道を通って滝坂の道(東海自然歩道)に入りました。

今回の歩き旅にはYAMAPのアプリと近鉄てくてくまっぷを使用しました。

近鉄てくてくまっぷはイラストマップですが、区間が分かれていて細かい案内もあり、とても良かったと思います。(柳生街道滝坂の道コース柳生街道剣豪の里コース柳生・笠置周遊コース

この春日大社から柳生までのコースは標識もとても良く整備されていますので、コースに入って直ぐに東海自然歩道の標識や春日山遊歩道の標識、若草山山頂への標識など、ポイントごとに様々な標識が出てきます。

先ずは整備された砂利道を歩き出しました。

最初から失敗?

歩き始めて徐々に木が生い茂り、春日山原始林の縁を気持ちよく歩きましたが、60分ほど経ってから「地獄谷園地」の標識が見えてきました。「?!」ここは首切り地蔵があるところです。という事は、寝仏と夕日観音、朝日観音を通り過ぎたということです。どこにあったのでしょうか?夕日観音はコースから少し入った所にあるようなので、見落としもありそうですが、朝日観音なコース上にあるはずです。それをまさかの見逃しでした。

首切り地蔵は思っていたよりも大きなお地蔵様でした。赤い前垂れを掛け、首に切り跡が残っています。

ここからは山道を歩きますが、途中で展望の開ける場所がありました。今回の山道ではほぼ展望はありませんでしたので、貴重な開けた展望でした。

首切り地蔵から約20分で峠の茶屋に着きました。この茶屋は週末と祝日しか開けていないそうです。茶屋の主が作ったくずもちを食べましたが、きな粉とお砂糖がかかったくずもちは口の中でとろけるみずみずしい美味しさでした。

わらびもちは絶品でした

茶屋から20分ほどで誓多林の里に出ます。田んぼには水が張られて植えられたばかりの小さな稲が光っています。まだ水面が見える田んぼには、周囲の景色と空が映り込んでいます。

コースの所々に「熊出没注意」の新しい標識がかけられています。この意味はハイキングの後半に明らかになります。

誓多林から暫くアスファルトの舗装路を歩きますが分岐で右折すると山道です。入ると直ぐに木造の”東海自然歩道”の年季の入った標識がありました。暫く山道を進みます。円成寺まで0.4kmの標識を右に曲がると間もなく石碑と六地蔵があります。円成寺に到着です。出発から3時間半ほどです。

田んぼに映りこむ周囲の風景がきれいでした
所々で見かけたこの表示。後半でその理由が判明します。

事前に調べてあったお食事処”里”で早めの昼食です。お店自慢の竹の子尽くし定食をいただきました。竹の子ご飯に竹の子の煮つけをはじめ、天ぷら、三輪そうめん、煮物や様々なお惣菜がついたご馳走定食でした。

お店自慢の竹の子づくし。三輪そうめんも美味でした

円成寺は外からの参拝として、お庭だけを拝見して先に進みました。

忍辱山バス停先には石垣が積まれた屋敷があり、その先から棚田を抜けて山道に入ります。新緑に時期を過ぎて生い茂った笹の横の道を通り、竹が折れて重なった林を通ります。道が少し荒れていたのはこの区間だけでした。この山を抜けると田んぼが広がる里に出ます。田んぼ沿いに歩くといくつかの石碑があります。静御前が産気づいたと言われる場所だそうです。更に、里が終わる所には木と木の間にしめ縄がかけられていて稲わらと木の枝がかけられています。村を守る結界でしょうか?

夜支布山口神社への道は少し分かりにくい分岐になっています。私たちは少し行き過ぎてしまい、地元の方に修正道を教えていただきました。いずれにしても、来た道をUターンするように方向を変えます。手前の標識を見落としたのかもしれません。途中から標識が再度でてきたので、それに沿って少し高台にある夜支布山口神社に到着しました。とてもきれいで清々しいお社です。神社後ろの岩がご神体になっているそうです。

急に荒れた道になります
竹林も荒れていました
集落の出入り口にあるしめ縄は魔除けでしょうか?
夜支布山口神社

山口神社を下りてからは暫く里山の中の畦道を行きます。南明寺までは45分くらいです。残念ながら南明寺は閉まっていて、入ることができませんでした。

お藤の井戸を通って先に進みますが、この辺りは一面に田んぼが広がっています。蝶が舞う広々とした田んぼの畦道です。

里の景色から山に入りますが、この入口で地元の方に声を掛けられました。阪原峠を越えて柳生まで行くというと、1週間ほど前に熊が目撃されているので気を付けるようにと言われました。今回のルートで「熊出没注意」の新しい看板が多数設置されていたのはこのためと思われます。山道に入るのに身の引き締まる思いでした。今回はホイッスルも持参していましたが、お守り代わりにザックに入れていたために直ぐに取り出せず、二人旅だったこともあり声を出して歩くことにしました。必要なものが直ぐに取り出せなかったのは反省点です。

今回の旅は苗を植えたばかりの田んぼの美しさが秀逸でした

ここからがこのコースで一番の登りになります。阪原峠、通称かえりばさ峠を呼ばれるそうです。かなりの山道、急登です。長い急登ではありません。時間にすれば15分くらいですがずっと穏やかな道を歩いてきた足には堪える登りです。そして峠までくればあとはほぼ下っていくことになります。

少し下った所にほうそう地蔵があります。これがほうそう地蔵です。所説ありますが、当時の流行病であったほうそうに罹患しないことを願って建てられたという説やこの地蔵菩薩立像の面の剥落欠損していた時期に、ほうそうを患ったように見えたことからこの名がついた、という説もあります。

この巨岩に掘られたお地蔵様のもう一つの歴史的意義は、周囲の神戸四箇郷、すなわち大柳生庄、小柳生庄、坂原庄、邑地(おうじ)庄の四ケ村が1528年の土一揆によって負債の免除を勝ち取った記録が記されているからです。

このほうそう地蔵が彫られている巨岩の側面にも裏にもお地蔵様が彫られています。岩は屋根に覆われていて、とても大切にされているのが感じられます。

この先で1週間ほど前に熊出没情報があったそうです
峠を越えてやっと下りになりました
ほうそう地蔵さま

ここからはもう柳生の村です。

小山田家分家跡は非公開ですが、石垣が積まれた高台に立派な屋敷跡が残されています。

そして、旧柳生藩家老屋敷跡は今でも公開されています。玄関を入ると、横には幾つもの和室が連なっており、その先には手入れの行き届いたお庭があります。この時期は躑躅がまだ残っていましたが、深い緑の剪定された木々が植わり、借景とともに趣のある風景になっています。

ここから柳生バス停までは直ぐです。諸般の事情から、今回はここまでとしました。

柳生バス停から近鉄奈良駅へのバスは休日は午後は3本しかありません。バス停向かいのお食事処で時間を調整して戻りました。

東海自然歩道、柳生街道は車が通る舗装道路がほとんどなく、山道と田んぼの広がる里山を交互に歩くとても素敵な道でした。

柳生新陰流を会得するために武士たちが奈良から馳せ参じたといわれる街道。そんな古に思いを馳せながら歩いた一日でした。紅葉の季節にもう一度歩きたいと思える道です。

Instagramに動画を掲載しています。合わせてご覧いただければ幸いです。 東海自然歩道・柳生街道