Part 2 アオラキ/マウント・クック国立公園

歩き旅

マウント・クック。 表題にあるように、マウント・クックの前に「アオラキ」と書いてあります。正式名称です。そして、アオラキとはマオリ語で「雲を突き抜ける山」という意味です。その標高3,724m、マオリにとっての聖なる山です。

そのマウント・クックを眺めながら歩くトレイルがマウント・クック国立公園にあります。

中でもフッカー・バレー・トラックが有名です。3つの吊り橋を渡り氷河湖とマウント・クックの絶景が見られるトレイルです。

しかし、トレイルの核心部にある2番目の吊り橋が掛け替え工事のためにその手前までしか行かれません。(2026年6月ごろまで)そのため、今回は以下のトラックを歩くことにしました。

フッカー・バレー・トラックの第一の吊り橋まで / レッド・ターンズ・トラック / セアリー・ターンズ・トラック

トレッキング1日目

朝、テカポ湖からプカキ湖、プカキ湖畔を北上しながらトワイゼルのラベンダー畑、タパタイア・マハカという展望台、タスマン川を見渡す展望台などを経てマウント・クックの中心部に入ります。

トレッカーの憧れ、ザ・ハーミテージホテルでランチを取り早速フッカー・バレー・トラックを歩きました。第一の吊り橋までです。

雲は多めながら雨の心配はなさそうですがマウント・クックはなかなかその姿を見せてくれません。

それでもブルーレイク・ミューラーレイクを眺めながらの散策は気持ちのよいものです。ミュラー湖畔に着くとマウント・クックが少しだけその姿を見せてくれました。

フッカー・バレー・トラックが途中までしか行かれないため、この日は午後からレッド・ターンズ・トラックを登りました。往復でも2~3時間で行かれます。

このエリアの最大の魅力は壮大な氷河谷の景色と周囲の山々です。レッド・ターンズ・トラックも登ってきた道を振り返る度に今いるところがかつては氷河で覆われ、その氷河で削られてU字谷になったことが良く分かります。気の遠くなるような長い歳月と自然の大きなエネルギーが感じられます。

レッド・ターンズ・トラックのターンズは池塘という意味だそうです。この日の目的地は山の中腹にある赤い池塘です。

麓から1時間ほど急登を登ったところででレッド・ターンズ見晴台に到着しました。

ここからは氷河湖とその背後には雪が残る山々。眼下にはU字谷とそこを流れる川。反対側に目を向ければレッド・ターンズから続く山の頂。この見晴台の先には高い木は無く、わずかな低木とざれた山肌、更に上は岩山になっています。

青い空がほんの少し雲の間から覗いています。

見晴台の少し下には名前の由来であるレッド・ターンズ、赤い池塘があります。この赤は池塘に生えている植物が赤いためですが、水面に伸びている茎と葉だけが赤く、水中では茶色でした。しかし、水面に浮き広がる赤を葉が上から見るとまるで池塘そのものが赤くみえるのです。

360度見渡すと方角によって変化していく地形と景色は見飽きることがありません。

トレッキング2日目 セアリー・ターンズ・トラック

1日かけてセアリー・ターンズ・トラックを往復します。

宿を出発した9時にはマウント・クックもマウント・セフトンも雲の中にありました。今日こそは晴れて欲しいと思っていたので少し残念に思いました。

今日もスペシャリストガイドのミッチーさんが案内をしてくれます。「登る途中からマウント・クックが見え始めるのが最高ですから今はまだ見えなくても大丈夫」と慰めてくれました。

ところが、まだ登山口に着く前から徐々に雲が取れ始め、マウント・クックとマウント・セフトンがその姿を見せてくれました。そして東側の山の中腹には白く長い雲がスーッとかかっています。

「アオテアロア」。ニュージーランドをマオリ語ではこう呼びます。そしてその意味は「白く長い雲」だそうです。この時見ていた山にかかる白く長い雲。これがこの国の名前の由来と聞き、自然を敬い、崇め、畏れ、共に暮らしてきたマオリの人々の風景が見られたことが嬉しく思いました。

自然を尊ぶこの地の人々がどこか日本民族と通じるように感じました。

アオテアロア 白く長い雲

1月はニュージーランドの真夏のはずですが、ここまではヒンヤリと寒い日が続いており、フリースを着込んでいました。しかし、ここにきてお天気は急速に回復しつつあり、気温も上がってきました。

セアリー・ターンズ・トラックはかなりの急登です。トラックの途中で階段を2000段登ることになっています。(事前に知らない方がよかった・・・)

そんな長丁場ですが、ミッチーさんの山・地形・植物・歴史の話しを聞きながらゆっくりと登っていきます。

目まぐるしく変わっていく風景。様々な角度から見えるマウント・クックと徐々に迫ってくるマウント・セフトン。眼下に見えるミュラー湖とU字谷。

見たこともないほど大きなデイジー(ラージ・マウンテン・デイジー)、様々な種類のヘーベ(ゴマノハグサ),スノーベリー、そしてマヌカの花も。

ミューラー湖と奥にフッカー湖そしてマウント・クック
ラージ・マウンテン・デイジー

途中の岩場で休憩しました。眼下にはミューラー湖、そしてその奥には橋の架け替えのために入れなかったフッカー・バレー・トラックにあるフッカー湖まで見えました。

マウント・クックは真っ青な空を従えています。

この絶景に足取りも少し軽くなりました。

歩き始めてから3時間半。目的地セアリー・ターンズ見晴台に到着です。

ターンズ、つまりここにも池塘があります。そして何よりもここからはマウント・クックだけではなく、正面にマウント・セフトンが望めます。

マウント・セフトンは懸垂氷河を頂き、山容は少しゴツゴツとしていますが、この見晴台から見るとまるで正面から迫ってくるようです。そして、池塘にはその山容が映し出されています。

2日前には雪が降ったそうで、夏にも関わらず新雪でキラキラと輝く氷河が見られました。美しく気高い景色です。

言伝えではマウント・クックとマウント・セフトンは兄弟だそうです。お兄さんはマウント・クック。気難しい顔をしています。そしてお兄さん大好きなマウント・セフトンはお兄さんを見ながら足を投げ出して座っている姿だそうです。言われてみればそんな風に見えなくもない...

セアリー・ターンズ見晴台からは間近なマウント・セフトンの方が大きく見えますが、実際にはマウント・セフトンが標高3,151m、そしてマウント・クックは3,274m。やはりお兄さんはマウント・クックです。

ガイドのミッチーさんが「セアリー・ターンズ見晴台にこんなに人がいるのを見たことが無い」というほど多くの人がいました。フッカー・バレー・トラックが途中から閉鎖されているためと、この日はお天気が良くなることを見越したトレッカー達が一斉に来たためと思われます。

そんな多くの人に混じって見晴台でランチを食べました。絶景を見ながら美味しいサンドイッチを頬張りました。疲れなどどこへやら、です。

心ゆくまで景色を楽しみ、写真を撮り、ミッチーさんの「下山の時こそ足元に注意です!」の言葉にも耳を傾けつつ、後ろ髪をひかれる思いで下山しました。

15時を過ぎると山のあちらこちらに「白く長い雲」が現れました。

そして夜9時を過ぎるとその「白く長い雲」が夕焼けに照らされて赤く燃え、あっという間に夜の帳がおりました。

今回の動画をInstagramに掲載しています。そちらもご覧いただければ幸いです。Hiking in New Zealand(Hooker Valley & Red Tarns) Sealy Tarns