以下には実際の湿疹の写真を掲載しています。ご覧になりたくない方のために事前にお知らせいたします。
経緯
小さな湿疹から全身に広まった湿疹。飲み薬・塗り薬を駆使しても治らず、全てを止めて湯治で自然治癒をしようとした安易な考えから起きた体の大爆発から12ヶ月が経ちました。
当初の全身にできた湿疹と止まらない浸出液。24時間続く落屑。痒みで一睡もできなかった日々。様々な段階を経て注射による生物製剤の投与を始めてから9ヵ月になります。
デュピクセント
自己注射のデュピクセントは2週間ごとに投与し、7月下旬まで20本投与しました。付属の「治療日誌」で振り返ってみると始めた当初は全身に皮疹として塗りつぶしがあった部分が少しずつ減っている様子がわかります。
先ずは足の太もも部分が消え、お腹が消え、背中の下半分が消えていきました。そして背中全体と手の甲が消えていきました。
体調によって収まった湿疹が出てくることもあります。肘の内側やわきの周りなどはなかなか完治しません。
7月下旬の時点では胸から首にかけてと顔には湿疹がかなり残っていました。湿疹も赤みも痒みもあり、落屑もありあます。日によっては良くなった!と感じることもありますが、逆戻りしてひどくなったりと一進一退の繰り返しです。
デュピクセントと共に処方されている塗り薬に即効性はなく、保冷剤で冷やしながら収まるまでひたすら待つことになり暑い季節には辛い症状です。
ここまでの回復はデュピクセントのおかげと考えるべきか、投与してもこの程度?と考えるのか、両方を並行して比べられないので分かりません。ただ、本人としてはもっと劇的な回復であって欲しかったと思うのも正直な気持ちです。
そのような中、ハイキング後の顔が腫れてしまいました。腫れはすぐに収まりましたが、それから2週間ほどして、朝、鏡に映った顔が白っぽくなっていました。よく見ると顔全体の皮膚がボロボロと剥離しています。そしてその日は大量の落屑がありました。落屑自体は腫れの鎮静化プロセスではありますが、その時の荒れ果てた顔はあまりにも衝撃的でした。
再考の時 再びセカンドオピニオン
脱ステロイドから11ヶ月、デュピクセント使用から9ヵ月が経っていました。本当にこのままで良いのか。いつまでこの繰り返しが続くのか、という疑問がよぎります。特に顔に繰り返し起こる湿疹とそれに続く落屑では、日によっては外に一歩も出られません。誰にも見られたくない顔なのです。気持ち的にも限界にきていると感じました。
眠れない夜にインターネットで色々と検索してみました。もしかしたら、デュピクセントとステロイドを併用する方法も悪くないのではないか、と考えるようになりました。
インターネットでは「ステロイドを使わずとも治療は可能」という意見がある一方で、「苦しい思いをしてまで脱ステロイドをする必要はなく、生活の質を保ちつつニーズに応じてステロイドを使いながらでも回復する」方法。さらには「生活全般から見直すという独自の治療法」を勧めるクリニックなど、さまざまです。
”困った時のセカンドオピニオン”で、デュピクセントを使用する決断をした時の医師に再度客観的な意見を求めることにしました。
事情を説明すると、「医師はあなたの希望に沿って治療するので、ステロイドを使う、使わないはあなた次第です。ステロイドを使いたくないと言われれば無理には使わないし、使って治療をしたいのならば、適切に管理してくれるはず」という意見でした。
医師からの説明を納得するまで聞いて、最終的に私は「デュピクセンとステロイドも使用しながらの治療に変える」ことを選択しました。そして、そのような治療法をしている医師を紹介していただき、早速病院を訪ねました。(相談した病院の医師はデュピクセントを扱っていませんので、私の希望する治療をしてくださる別の医師を紹介していただきました)
新しい皮膚科医院で今までの状況と、デュピクセントを使っているにも関わらず、顔が腫れた後に大量の落屑があり、「心が折れてしまった」ことでステロイドを使うのもやむなしという気持ちになった経緯をお話ししました。すると、ここで思いがけない展開になりました。
新しい選択 リンヴォック ー ジャック阻害薬って何?
医師の説明によると、デュピクセントの弱みの一つに”顔の改善傾向が弱い”ことがあるので、”ジャック阻害薬”のリンヴォックに切り替えてみてはどうだろうか?というのです。
勉強不足ですが、初めて聞く”じゃっくそがいやく”?思わず「それは漢方ですか?」という頓珍漢な質問をしてしまいましたが、簡単な説明と、あとでよく読んでください、と資料を渡されました。
またこの時に医師から「大丈夫、必ず治してあげるから、心配しないで」と言われました。泣きたくなるくらいの嬉しい一言でした。
自宅に戻ってから、いただいた資料を読み、私なりに調べてみました。
まず、今まで使用してきたデュピクセントですが、「デュピクセント 顔 効かない」で検索すると、さまざまな皮膚科医院のホームページで顔の赤みや新たな湿疹の発症、効き目が弱い、改善がみられないなどの記事が載っています。また理化学研究所の2024年3月のプレスリリースに「アトピー性皮膚炎患者の顔の紅斑を治療経過で層別化 -生物学的製剤デュピルマブ(デュピクセントのこと)の治療効果の予測に成功-」という記事があり、デュピクセントには顔の湿疹(赤み)の改善に問題があるということが分かります。”デュピクセント”で検索しただけでは分からなかったことです。
次にリンヴォックとは、ジャック阻害薬の一つで、アトピー性皮膚炎にも効果があります。ヤヌスキナーゼという酵素(JAK)を阻害し免疫反応に関わるサイトカインの働きを抑えます。その結果、皮膚内部の炎症を抑えて、皮膚の表面の炎症や痒みが改善され、さらに痒みを引き起こすサイクルが断ち切られます。
このため、デュピクセントで効き目が得られなかった患者へ投与し、その改善が期待されます。そしてこの薬は注射ではなく飲み薬なのでハンドリングも簡単です。
良いことばかりのようにも思えますが、デメリットもあります。
導入前の検査として、採血・胸部レントゲンが最低限必要であること。免疫力が低下するために注意すべき副作用があることです。それは感染症のリスクが高まること。帯状疱疹、深部静脈血栓症、消化管穿孔、肝機能障害、間質性肺炎、非黒色腫皮膚癌などの発症のリスクが高くなることです。特に感染症と帯状疱疹については様々な記事に記載があり、特にこの二つには気を付けなければならないようです。
早速血液検査と胸部レントゲンを行い、8月11日の朝からリンヴォック15mgの服用を始めました。
因みに、7月29日に最後のデュピクセントを投与しています。また、塗り薬を以前使ったことがあるコレクチム軟膏に変更しましたが、この薬も外用ではありますが”JAK阻害薬”であることを初めて知りました。抗アレルギー剤を含めて薬は変更しました。ステロイドの使用を覚悟して病院を変えたのですが、結果的にここまではステロイドを使っていません。コレクチム軟膏のほかには首から胸にかけて保湿剤のヒルドイドローションを1日2回使っています。
リンヴォック服用から2週間
医師からは「2週間服用して先ずは様子を見ましょう」と言われました。今回服用するのは15mgのものです。(リンヴォックには15mgと30mgがあります)
毎朝1錠を服用し始めました。服用から3日目、明らかに痒みがなくなりました。いつも痒みや不快感で手を伸ばしている首や顔を触る頻度が減っています。ほぼ1日中気になりません。顔の赤みも取れて、首の湿疹もきれいになっています。
これは幸先の良いスタートと喜んでいましたが、5日目に入って急に痒みが出てきました。夜になって無性に痒くなり、鏡を見てみると新たな湿疹が首一面にできています。ブツブツと立体的な湿疹です。そして顔も所々赤くなっています。
7日目、顔の湿疹が広がりました。首の湿疹は少し落ち着いてきましたが、まだ一面に湿疹があります。9日目以降からは顔の赤みが収まってきたと同時に、首の湿疹もかなり落ち着いてきました。ブツブツは取れてきました。その後、顔の赤みはほぼ取れています。首の湿疹はうっすらと赤い程度ですが、時々痒みはあります。
2週間が経ち、リンヴォックの使用を始めてから初めての診察日です。湿疹はほぼ収まった状態で痒みもほとんどありません。医師に5日目から6日目にかけて首と胸、そして顔に湿疹が出たことを伝え、その時の写真を見てもらいました。原因はわからないものの、一過性のアトピー性皮膚炎が部分的に出たもので、薬の副作用などではないとのことでした。薬の副作用の場合は全身に出るので、一部だけは考えにくいそうです。
この湿疹があったため、更に2週間、同じ処方で様子を見ることになりました。
リンヴォックはアプリ付き!
リンヴォックを1日1回、毎朝1錠服用しています。毎日きちんと飲まなければならない薬です。病院でいただいたパンフレットに「LINEアプリ リンヴォック®服用サポーター」を見つけました。LINE登録しておくと、
- 毎日決まった時間に「お薬飲みましたか?」メッセージが届きます。
- 「飲んだ」を押すと記録画面が出てきます。
- 記録画面には痒みの強さ、塗り薬を塗ったかどうか、何回塗ったか、などが記録できます。
便利そうなので早速使っています。飽きないように日々ブーケが成長していきます。使い勝手はとても良いです。
この他にも、アプリ以外にはAIチャットボットやお薬サポート、医療費オンライン相談室などがあります。
新しいステージの始まり
リンヴォックの服用を始めて3週目に入りました。現在は顔も首も胸も見た目には全く何もないように見えます。湿疹も痒みもほぼなく、従って落屑もほぼありません。気になる点があるとすれば、顔、首、胸の湿疹が最後まで出ていた部分の皮膚が不自然にツルツルしているように感じます。うまく表現できませんが、皮膚の凹凸が感じられず、プラスチック感があり体の他の部位とは違うように感じます。
それでも、ここまで回復し、夜中に搔きむしることも、保冷剤で冷やすこともなく眠れるようになり、外出先で人目を気にしながら掻かずに済むのはホッとします。何よりも、「大丈夫、必ず治してあげるから、心配しないで!」と言い続けてくださる先生の言葉は励みにになり、心が軽くなります。
始まったばかりのリンヴォックでの治療ですが、今後も行方の記録していきたいと思います。