8.脱ステロイド 4ヵ月

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以下には実際の湿疹の写真を掲載しています。ご覧になりたくない方のために事前にお知らせいたします。

北海道の豊富温泉で脱ステロイドを始めてから4ヵ月(123日)が経ちました。

激しいリバウンドによる全身の湿疹、浸出液、落屑、痒み、痛み、乾燥、発熱、不眠と不用意にステロイドを止めた為に起きた反動の恐ろしさを身をもって体験した、私にとっては長い長い4ヵ月でした。回復の兆しが見えてきたいま、この4ヵ月を振り返ってみます。 

豊富温泉に湯治に行き、急にステロイドを止めたことによって全身に湿疹が現れ、顔と耳から滲出液が溢れ、強烈な痒みがきました。全身の湿疹による発熱もありました。少し落ち着いては何度も現れる湿疹と浸出液、絶えず悩まされる強い痒みそして落屑。そのような状況が続く中、様々な経緯があり89日目(約3ヵ月)からデュピクセントの投与を始めました。

既に3回(4本目)のデュピクセント投与を終えました。(デュピクセントについては「5.脱ステロイド デュピクセント使用へ」「6.脱ステロイド デュピクセント1回目」「7.脱ステロイド 初めての自己注射」も併せてご覧ください。)

強い痒みの回数は明らかに減っています。

夜は数時間は連続して眠れるようになりました。

手の甲は急速に回復しつつあります。

体の皮膚の表面が滑らかになってきています。

未だに顔や首、肩や胸からの落屑はありますが、その他の身体の部分からの落屑は減ってきています。ただ、落屑が細かくなり以前にも書きましたが、粉状の落屑を吸い込んで咳がでたり、先日は細かい落屑が頻繁に目に入りものもらいができかけました。幸い早期に点眼薬を処方していただいたのであまり腫れずに収まりました。

まだ何カ所か身体に湿疹はありますが、ほとんどの所では乾いて今では”古傷”のようになっています。

真っ暗闇を進んでいたところに遠い先に小さな灯りが見えてきたと感じています。

気が付けば、脱ステロイドを始めた頃には枕にタオルを敷いて寝ても翌日には浸出液が全面に付いていましたが、いつしか汚れがなくなり、今はタオル無しで眠れます。

背中の湿疹もなかなか治らず、少しでもタオルで擦れば血が付いてきました。今でも毎日にように痒みはありますが、すっかり乾燥しています。

手の甲の瘡蓋が無くなり、浸出液もでなくなりました。浸出液と瘡蓋が寝具に引っかかるために夜間の手袋は欠かせませんでしたが、今では手袋をせずに寝ることができるようになり、更にはここ数日ですが、手の甲に大きな改善が見られたので、手袋なしで外出できるようになりました。指の曲げ伸ばしの際も痛みがなくなり、野菜を刻んだり、リンゴを剥いたりできるようになりました。

10月11月は激しい痒みもあり、強く掻いた痕がのこっています。

4ヵ月が経ちリバウンドがピークを越えて快方へ向かう時期でもありましょうし、デュピクセンの効果が出てきていること、又は季節が変わり気温が下がってきたことも状況進展の要因になっていると思います。

マインドの在り方

この4ヶ月間は身体的な辛さはもちろんの事ですが、気持ちの在りようがとても難しかったと感じます。

激しいリバウンドが始まった最初の頃は、どうしてこのような事態になってしまったのか自問自答の日々で、焦燥と変わり果てた自分の様相への悲しみとどこにぶつけてよいのか分からない怒りがありました。

リバウンドが始まった豊富温泉では、ふれあいセンターのスタッフの皆さん、そして健康相談室の相談員の方々に見守られ、励まされて乗り越えることができました。毎日のように通ってはアドバイスを頂いたり、情報をもらったり、また何気ない話しが心を落ち着かせてくれました。皆さんの支えが無ければ浸出液で覆われていく顔にどう対処してよいかも分からず、心を正常に保つことは難しかったと思います。スタッフ、相談員の皆さんには感謝してもしきれません。

自宅に戻り、リバウンドの辛さが日常化してくると、「あともう少し頑張れば…」と自分に言い聞かせていました。しかし、治療方針について家族との意見の相違もあり、それを説得できない自分がもどかしく、また今回の事態で家族には大きな負担をかけているという負い目もあり、気持ちの安定しない日々がありました。

今でも瞬きで気が付くとメガネに落屑が付着しています。

私自身は”脱ステロイド”を止めることは考えていなかったのですが、自分の不安を払拭するためとこの事態を案ずる家族に理解してもらうためにも、今の状態が回復の正常なプロセスの過程であると確認する必要を感じて、同じ”脱ステロイド”を掲げる医師にセカンドオピニオンを求めることにしました。

ターニングポイント

以前にも記述しましたが、このセカンドオピニオンはとても大きな転換期となりました。

まずは、経緯を聞いていただき、現在の状況が回復への正常なプロセスの過程であると確認していただきました。

次に、デュピクセントの使用について、投与できる状況であるならば使用した方が良いとのアドバイスをいただきました。それは、①現在診てもらっている医師からも投与を勧められている、②本人も投与して早期に回復したいと望んでいる、そして③経済的な問題がクリアできる。これらの条件が満たされているのであれば使用してもよいのではないかというアドバイスでした。

現在服用している薬についてはこのまま続ければよいし、処方されている軟膏についても有益なご意見をいただきました。この軟膏は非常に良いが、今は製薬会社で作っているところはなく、医師が独自に処方している貴重な軟膏で、とても良い物であること。せっかく処方されているのであれば、有効に使うべきであること。塗り方は優しく撫でるように塗り、決して強く擦りこんだりしてはいけない。また、1日1回から2回塗布とあるが、必要であれば何回でも塗ればよいと教えていただきました。唯一の欠点はその強烈な匂いですが、慣れてしまった今では不快感は全くありません。(ピーナッツバターが焦げたような匂い、というそうですが、今では私にとっては心地よい匂いでさえあります)

入浴についてはそれまでは医師の指導でシャワーのみにしていましたが、湯船に入ることを勧められました。理由は、お風呂での発汗作用は皮膚に良いことと、それによって毛穴がきちんと開くようになることです。そして、長湯はダメだけれど湯船の中で、そっと体を撫でればそれで体の汚れは十分に落ちる、ということでした。

その日の夜、早速恐る恐る入ってみましたが、元々お風呂好きではありましたが、水圧と浮力でそれまでピリピリと尖っていた神経が温かい湯の中で和らいでいくのを実感しました。心配していた皮膚の傷にお湯が滲みて痛く感じることもなく、逆に久しぶりに「気持ちよさ」を感じました。教わった通り、お湯の中でそっと体を撫でてみれば、みるみるうちにお湯が濁り、驚くほど大量の落屑がありました。その後、落屑の量は減ってきていますが、それは今でも続いています。お風呂に入れるようになったことは私にとっては大きな変化で、1日に1回は確実に全身の緊張と神経を緩められる貴重な時間になりました。

ちょっとした感動

お風呂に入るようになってから約ひと月後、外出から帰ると、ちょうど我が家の玄関ポーチから出てきたと思われる人に会いました。その人は水道局の検針の方でした。隣に家に行きかけていたその人が戻ってきて、「水道局の検針員です。最近、水道を多く使うような変化はありましたか?」と聞かれました。私がお風呂に入った後は落屑があるために湯船のお湯は直ぐに流しています。その為「最近はお風呂のお湯を多く使っています」と答えると、「今、メーターを見た限りでは留守の間にはメーターが動いていないので漏水ではないと思われるのですが、使用料がかなり増えているのでお聞きするまでは請求を確定しないでおこうと思っていました」とのことでした。

おそらく、前月と比べてその使用料が大幅に増えた時などは原因を突き止めることが水道局のルールになっているのかもしれませんが、知らないところで多くの人にちゃんと見守られているのだな、と感動しましたし、このような地道で細やかな仕事をする人たちによってで社会が守られていると感心しました。

湯治の日、これから1年の健康を祈りつつユズ湯でリラックス。

勇気づけられる一言

デュピクセントの投与は複数の医師に薦められたとはいえ、大きな決断でしたし、不安もありました。自己注射をするにあたり、看護師さんから指導を受けましたが、指導の最後に「投与をした皆さん良くなっていますから、頑張りましょう。」と言われました。不安な時の前向きな言葉には大いに励まされますし、多くの患者さんを診ている看護師さんの言葉であればなおさらです。

以前にも書きましたが、今まで病気らしい病気をしてこなかった「元気印」の私が2020年から始まった”小さな湿疹”でこのような経緯を辿るとは思ってもみませんでした。健康であることのありがたさや周囲の人々の温かい支えをあらためて実感しています。豊富温泉でもそうでしたし、小さな励ましの一言や家族が贈ってくれた健康お守りも私がこの困難な中で正しく前を向くための支えになっています。

家族から贈られた大切なお守り

回復への前進はありますがいつまでリバウンドが続くのか、新たな湿疹が出てくるのか、いつになったら全面的に回復するのか、そしてそれらとこれからどのように向き合っていくのか。身体的・心的な試行錯誤はまだまだ続きそうです。

身体に良いと言われるものは早速試してみます。
2023年冬至の日の出 (冬至は陰極まり陽に転じる日と教わりました)