サンティアゴ巡礼を終えてから早くも8か月が経とうとしている。そして今でも事あるごとに楽しかった巡礼の日々を思い出す。
その思い出は、時に空を流れる雲であったり、風景であったり、食べ物であるが、一番は出会った人々である。今まで書いてきたエッセイに登場した人々もしなかった人々も、その出会いによって私に何かを与えてくれた大切な人々だ。
「ムッシュ・ペルラン」と題したエッセイに登場するアンリは巡礼を始めて数日後に出会っている。前述したように、道中コロナ感染症に罹患し、スペインの病院に4日間入院した後にフランスに帰国せざるを得なかった。
「短い期間だったけど、楽しい巡礼だった。」と連絡をくれたし、2023年に入って直ぐに「今年1年が良い年になるように願っている」と心温まるメッセージをもらっていた。とても律儀なジェントルマンだ。
そのアンリから突然新しいメッセージが届いた。「昨日、サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着しました。」という短いメッセージの後にお星さまとカタツムリとお花の絵文字が付いていたし、美しく懐かしい大聖堂の写真が添付されていた。
嬉しかった。本当に嬉しかった。アンリが諦めずに再度巡礼に戻ったことも、達成した喜びを分かち合ってくれたことも。
彼にとっては交通事故で亡くなった娘さんを偲ぶ大切な巡礼の旅であっただけに、前回途中でのリタイアは残念だっただろう。だからこそ今回の達成の喜びはひとしおだったに違いない。そして、それを知らせてくれたことをとても嬉しく、誇りに思う。
日本では袖振り合うも多生の縁という言葉があるが、洋の東西に関わらずこのような人とのつながりを何百年もの間サンティアゴは微笑ましく見守っていらしたに違いない。巡礼の旅の意味に改めて想いを巡らせる。
アンリ、サンティアゴ巡礼の達成、心からおめでとう！
