蝶ヶ岳

低山ハイク

「北アルプスのあの大展望を見せてあげたいなぁ」という配偶者の一言から始まった蝶ヶ岳登山計画です。

行程は長いけど危険個所はほぼ無く、蝶ヶ岳ヒュッテからは目の前に北アルプスの蒼々たる山々が目線の高さで見えることなどを聞くと言ってみたくなります。

事前に猛暑の高尾の心源院から八王子城山、唐沢山、地蔵峰を通るコースでトレーニングをしてからチャレンジしました。

行程

1日目は新宿から松本、そして豊科まで,約5時間移動しました。

2日目

豊科のホテルから三俣登山口まで事前に予約したタクシーで移動です。

6時20分に三俣登山口から出発。

登山口からわずかに行った所に蝶ヶ岳と常念岳への分岐があります。蝶ヶ岳方面の沢沿いを歩き、吊り橋を渡り、どこも良く整備された登山道を登っていきます。気持ちの良い森歩きです。 

1時間40分ほどで”ゴジラみたいな木”に到着です。誰しもが一度は止まって記念写真を撮るようです。ちょど良い休憩地点でもあり、ザックを下ろして少しの間休憩します。

この手前で登山届を提出しました
常念岳との分岐
ゴジラみたいな木

この日の天気予報は”晴れ”マーク一つで快晴になっていましたが、実際は歩き始めてからずっと曇っていました。曇りでも十分に暑く、あっという間に大量の汗をかきました。ザックの肩パットは既にびっしょり濡れています。晴れていたらもっと体力を奪われていたと思います。

ゴジさんポイントで休憩の後は約1時間と少しでまめうち平です。この地点は三俣から2.5㎞、蝶ヶ岳ヒュッテまで3.9㎞。標高は約1900mです。ここでもベンチがあり、休憩ポイントになっています。

天気予報は晴れマークだったのに…

ひたすら森の中を登っていく登山道ですが、道はどこも良く整備されていて、木造の階段が多く設置されています。このありがたい階段が後半ではうらめしく思えてきます。

ひたすら樹林帯ですが、お花もたくさん咲いています。ゴゼンタチバナ、ミヤマアキノキリンソウ、オトギリソウ、クルマユリ、フウロソウ、ヤマハハコなど、前半はまだ体力に余裕があり、一つ一つを楽しみながら登りました。

木々の間からも太陽の光は見えません

標高2500m地点に”最終ベンチ”があります。ここまで来ると休憩の間隔を狭めて、休憩と給水を細かく繰り返して登っていきます。階段も多く、重いザックが肩に食いこんでくるように感じます。

この辺りまでくると休憩の間隔も短くなります

森林限界を超えて高い木々がなくなり、ハイマツ地帯になっても霧は一向に晴れません。周囲は真っ白です。”上に行けば雲が取れているはず”という淡い期待もここまでガスっていると諦めるしかありません。ここまでの間、下山してきたハイカーに聞くと、朝は快晴だったそうですが、午前8時ごろには周囲の山々は雲に覆われてしまったということでした。

白いベールの先に色とりどりのテントのシルエットが淡く見えてきました。ヒュッテに到着です。登山口から5時間半ほどで辿り着きました。

森林限界を抜けてもこのありさま
蝶ヶ岳ヒュッテのテント場もガスの中
周囲真っ白の中で”登頂!”

一旦ヒュッテに寄り、宿泊の受付を済ませます。受付横のボードに書かれた”今日のお天気・晴時々曇り”の文字を恨めしく読みました。

荷物を軽くしてから蝶ヶ岳山頂と蝶槍に向かいます。

ヒュッテから蝶ヶ岳山頂は5分。周囲が真っ白な山頂で記念写真です。背景は白。周囲の山々のシルエットさえみえません。

ヒュッテを少し下った所で雷鳥親子に出会いました。ちょうどお昼時。雷鳥もランチタイムのようです。白い花をついばんでいます。調べてみると”オヤマソバ”というそうです。

雷鳥現る
この日一番の眺望はうっすら見えた穂高連峰

蝶槍は横尾の分岐を通って常念岳方面に向かいます。途中、常念岳から縦走してきた多くのハイカーに会いました。

ヒュッテから蝶槍までは1時間ほどかかります。思いのほか遠く感じました。蝶槍山頂直前で一旦諦めかけましたが、ちょうど山頂から下りてきたハイカーに、「もう直ぐそこですよ!」と教えてもらい行く事にしました。最後のひと登りは岩登りでしたが、山頂は本当にすぐそこでした。

蝶槍山頂も周囲は真っ白。何も見えませんでした。

帰路、ほんの少し雲が切れて正面の穂高連峰が見えました。明日の朝に期待が膨らみます。

蝶ヶ岳ヒュッテ

本格的な山小屋泊は初めての体験です。宿泊日の6週間前にやまたんでネット予約しました。今回は敢えて大部屋を予約しましたが、実際は二人分のスペース毎に区切られた2段ベッドの様な場所の下の部分でした。敷布団、掛け布団、毛布が用意されており、私は持参したシュラフシーツと備品の掛け布団を利用しました。ベッドの三方は壁、足元にはカーテンもあったため着替えも可能でした。

蝶槍山頂も周囲は真っ白!
3日目

午前4時に起床して外に出ると、目の前に穂高連峰が現れています。まだ朝日も当たっていない山々が青々として聳えています。前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、大キレット、南岳、中岳、大喰岳、そしてしんがりは槍ヶ岳です。

周囲は明るくなっていますが、日の出まではまだ少し時間があります。北アルプス連山の反対側の空は...真一文字のオレンジの線。下は雲海、上はオレンジのグラデーションが淡くなり空に溶け込んでいます。待ちに待った快晴の空です。

南側に目を向けるとオレンジ色に染まった雲海の上に富士山のシルエットが見えます。

朝焼けが始まる頃
雲海の中から富士山のシルエット

午前5時少し前、日の出とともに北アルプスの山々に太陽の光があたり、その山頂から赤く輝きだします。初めて目にするモルゲンロートです。この時、空には雲一つなく、昨日の天気が噓のようでした。「この景色を見せたかった!」と配偶者もホッとした様子でした。

見たかったのはこの景色

軽い朝食をとり、午前5時30分に下山開始です。前日真っ白だった蝶ヶ岳山頂でリベンジ記念写真を撮りました。

下山は長塀尾根を下り徳澤を経て上高地がゴールです。穏やかな樹林帯に入ると直ぐに”妖精ノ池”があります。早朝で空気も澄んでいるため、周囲の木々が水面に映っています。

名残惜しく、最後にもう一枚
早朝の妖精ノ池

池の傍に10枚ほどの大きな長細い葉にが丸く開いていて、その真ん中に白い可憐な花が咲いていました。初めて見る花です。調べるとキヌガサソウ(衣笠草)というそうです。とても特徴的な植物です。チングルマも既に綿毛になってその痕跡を残していました。

長塀山へ一旦登りますが、この先はずっと下りです。6時間樹林帯を下っていきました。危険な箇所はありませんがひたすら下っていきます。このルートでの下山は人も少なくしまい込んでいたクマ鈴を出してザックに取り付けました。

4時間後、徳澤に着きました。徳澤園にはキャンプ場の炊事場があります。ヒュッテでは貴重な水を皆が大切に使っていましたが、ここでやっと気兼ねなく水で手を存分に洗いました。

”みちくさ食堂”で一休みです。温かいココアとトーストで休憩です。

ふと見上げると、穂高連峰が目の前にあります。美しい山並みです。

徳澤園からみる明神岳と穂高連峰
梓川のほとりを歩きます

徳澤から上高地までは2時間ほど歩きますが、この区間は散策路になっています。木漏れ日が揺らめく森と横を流れる梓川、そして時折顔を出す山並みを見ながら楽しめるトレッキングコースです。人の数もぐっと増えてきます。

更に人の数が増えてくると河童橋が目前です。振り返れば奥穂高岳や前穂高岳などが見えています。ここで今回の山行は終了です。

河童橋から見える穂高連峰と明神岳

「北アルプスの大展望を見せてあげたい」から始まった蝶ヶ岳登山計画。蝶ヶ岳から見る北アルプスの雄大さは麓から見上げる山並みとは違った、高い標高の場所から見渡すことで感じられるものでした。登ってみなければわからないこの大展望を存分に楽しめた山行になりました。

誘われなければ登ることが無かった蝶ヶ岳、低山ばかり登っている私には確かに長く辛かったけど、記憶に残る登山になりました。

今回の動画をInstagramに掲載しています。そちらもご覧いただければ幸いです。蝶ヶ岳

追記情報:帰路は上高地から新宿までの高速バスを利用しました。渋滞などもあり、予定よりもおよそ1時間遅れ、トータルで5時間半かかりました。乗換えもなく乗車しているだけですが、6時間の下山の後の5時間半は長く感じられました。