木曽駒ケ岳

低山ハイク

千畳敷カールを越えてゆく木曾駒ケ岳。Youtubeで観るたびにため息が出るほど美しく、「いいな、行ってみたいな」とずっと思っていました。

木曽駒ケ岳の様々な映像を見ると、”初心者でも行かれる”、”危険個所はほぼない”というコメントが多くありました。漠然とですが「私でも登れるかもしれない・・・」と思い始めていました。

自力で行く事を考えて、行き方と宿を調べてみました。早朝に家を出て高速バスで駒ヶ根バスターミナルまで行き、そこで路線バスに乗り換えて駒ケ岳ロープウェイの駅があるしらび平まで行き、ロープウェイで千畳敷まで上る。その日に宝剣山荘まで行き、山小屋に1泊し、翌朝木曽駒ケ岳に登頂して戻る。というプランでしたが。。。

投稿された他の映像では、”終日晴天の天気予報だったのに雨が降り出し、テントまで張ったのにあえなく撤退”や”あっという間に周囲が真っ白になり方向も定かでなくなった”という物もありました。千畳敷で標高が2600m、山頂は2956mです。天気は頻繁に変化します。それに対応できるスキルが自分にあるか心配になってきました。

経験値が低い私に無理は禁物と自分に言い聞かせてツアーを利用することにしました。

何度か利用しているクラブツーリズムを見てみると、私が計画した宝剣山荘1泊で木曽駒ケ岳を登るツアーがありました。しかし、いくつかある日程のすべてが土曜日・日曜日出発になっています。人気で混む山にわざわざ混んでいる週末に行く必要もないと思い、このプランは諦めました。

そして選んだのは、『日本アルプスの百名山2座登頂を効率よく制覇! 乗鞍岳・木曽駒ヶ岳 2日間』という思いがけないプランです。

百名山を目指したい訳ではなく、乗鞍岳に登ることは考えていませんでしたが、このプランが私の希望に一番近いものでした。

1日目に松本駅から専用バスで畳平まで行き、乗鞍岳登頂。その後駒ヶ根までバスで移動してホテルに宿泊。

2日目は路線バスでしらび平駅まで行き、ロープウェイで千畳敷に上がり木曽駒ケ岳山頂を目指します。ピストンで下り、早太郎温泉でお風呂に入って帰路につくというコースです。

少し不安はありましたが、登山ガイドが同行する山行なので、体力をつけ、また万全の体調で目指せるように準備しました。

当日はピカピカの晴天とはいきませんでしたが、雲がかかったり、切れたり。どちらかというとお天気に傾いた曇り空でした。

しらび平駅の表示では山頂の気温は15度。連日日本のあちらこちらで酷暑日が観測されていたので見ただけでほっとする気温です。もしもの時のために薄手の防寒着と雨具はしっかりとバックパックに準備しました。

しらび平駅を降りてデッキに出ると、「これこれ!この景色!」という美しいカールと青い空、白い雲、そしてカールいっぱいに花が咲いています。この景色だけでも十分に来た甲斐があります。

丸みを帯びた窪みとその先にそそり立つ山並み。窪みの底では植物が生い茂り、一斉に花を咲かせています。山の斜面を上がるにつれて岩の筋や地層が露わになった山肌と植物の緑がまだらになっていきます。目を凝らしてみるとカールの底から登り立つ岩肌にジグザグと登山道きってあり、多くの人が登っています。稜線に出る直前の登りは下から見てもドキッとするような急登です。登山者に「ここが登れるかな?」と挑んでくるような岩々しい急登です。

美しい風景に心が沸き立つと同時に、あの急登が登れるのか、またちゃんと下りてこられるのか、不安がよぎりました。

こんな時は神頼みということで、しらび平にある”信州駒ケ岳神社”に先ずはお参りして登山の無事をお願いしました。午前9時過ぎに登山開始です。

登山前にお参りです

登山口までの散策路から既にお花畑が始まっています。チングルマ、ミヤマキンポウゲ、フウロソウ、タカネツメクサ、エゾシオガマ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、コバイケイソウ、中岳を過ぎた後半にはコマクサ、そしてヒメウスユキソウ。正に百花繚乱とはこのことです。

ヒメウスユキソウに出会えたのは想定外で嬉しかったです。

散策路の先端に「ここから登山道」の標識があり、既に多くの登山者が登っていました。この日は駒ヶ根中学校恒例の2年生の木曽駒ケ岳登山があり、前方に100人以上がお揃いのジャージ上下を着て登っていくのが見えました。さすがに若者は足取りも軽やかに登っていきます。

想像通り、登山道に入った途端にゴロゴロと石がある道になり、斜度がドンドンきつくなり、場所によっては丸太が組まれていたり、石が落ちないように登山道の上や側面にフェンスが張られています。前後に人も多く、また既に下ってくる登山者もあり、一瞬も気が抜けません。それでも休息の場所やすれ違いなどは登山ガイドの方の適切な声掛けがあったため落ち着いて登ることができました。

標高が上がるにつれて少し息苦しく感じ、前日に教わった長く細くゆっくりと息を吐く呼吸法を心がけました。緊張の連続だったため、写真を撮る余裕はあまりありませんでした。

近づくほどに斜面がそそり立って見えます

急登を登りきった所は”乗越浄土”です。平らでひらけているので暫し休憩です。ホッとする水平の道を通って宝剣山荘へ。ここで昼食をとり中岳へ向かいます。

中岳(標高2925m)で中学生の一団に追いつきました。あまり広くない中岳は人でいっぱいです。

中岳を過ぎると一旦下ります。前日の説明では「ちょっと下ってから最後の登りです」ということでしたが、石ゴロゴロの道を”ちょっと”ではなく”結構”下ります。

登り返して20分ほど鳥居が見えてきました。いよいよ山頂です。

宝剣山荘から中岳を望む
山頂のお社

鳥居の中にはお社があり、その横に山頂標識があります。やっと憧れの山頂に立つことができました。感動の一瞬です。

一面真っ青な空とはいきませんでしたが、雲の切れ間から青空が覗いています。そして時折風が吹き周囲がちらりと顔を出してくれます。今登ってきた道もくっきりと見えました。比較的広い山頂とその周辺を歩きまわり木曾駒ケ岳を存分に味わいました。

木曾駒ケ岳山頂から来た道を振り返ります

駒ヶ根中学校の生徒たちはこの山頂でお昼タイムです。一方、私達のグループは山頂で20分ほど過ごし、彼らが下山を始める前に帰路につきました。

木曽駒ケ岳山頂を少し下ったところで雷鳥に出会いました。初めてライブで見る雷鳥です。この地域で雷鳥の保護が進められているため、数も順調に増えており、また人を見ても逃げないそうです。

皆が見てみたい雷鳥の出現に登山道では”雷鳥渋滞”が発生。慌てて動いて転んでは危険なので、雷鳥はみたいけど動きは慎重に!と心と体の動きは反比例です。そのため私の位置からは1羽しか確認できませんでしたが、実際は母子3羽いたそうです。下山後に母子3羽のすてきな動画を見せてもらいました。

雷鳥!見事な保護色です

木曽駒ケ岳山頂から下って、登り返して中岳。そして宝剣山荘。ここでは天狗岩と呼ばれる場所がありますが、天狗というよりも猿の横顔に見えます。ちょうど雲がかかりうっすらとベールを掛けたようなシルエットは天狗・猿の横顔そのものに見えます。

天狗岩と呼ばれていますが猿にも見えます

この先からは乗越浄土までの水平の道、その先端で急斜面の縁に到達します。この先からが千畳敷までの急な下りの始まりです。私にとっては一番の難所です。この時ばかりは登山ガイドのすぐ後ろに付かせてもらい、一歩一歩慎重に下りました。段差の大きな所、足場の悪い所、石が安定していない所、幅の狭い所を一つ一つゆっくりクリアします。

下りでは右手に宝剣岳を仰ぎ見ることができます。途中で宝剣岳の山頂の岩のてっぺんに人が立って手を振っています。登山ガイドによると、岩は人一人が立てるだけの狭い所でスリル満点の場所だそうです。下りで必死の私には咄嗟に写真を撮る余裕はありませんでした。

急傾斜を下り始めて40分ほど、やっと傾斜が穏やかになり全身の力が抜けていきます。それでも最後まで油断は禁物と自分に言い聞かせながら千畳敷駅まで歩きました。

登りよりも下りが...
右側が宝剣岳。私には行かれない頂きです

朝に千畳敷駅を出てから戻るまで、YAMAPのコースタイムで4時間42分でした。登り下りの最中は太陽が雲に遮られていたのでジリジリとした暑さを感じることはありませんでした。曇り空が功を奏して体力を温存できたのかもしれません。心配していた脚力も何とか保つことができました。

往路、途中の宝剣山荘で昼食タイムがありましたが、お弁当のおにぎりを1個しか食べられませんでした。帰路に再度立ち寄った宝剣山荘での休憩時に初めて赤いアミノバイタルのゼリードリンク1本をエネルギーチャージとして飲みました。このためかどうかは分かりませんが、最後までエネルギー不足を感じること無く、足もふらつかずに下山できました。

お天気にも恵まれ、一番良い花の季節に美しい千畳敷カールを歩き、憧れの木曾駒ケ岳に登ることができました。

60歳過ぎてから始めた低山歩きでここまで来られたのは嬉しい事です。元々は長距離を歩くためにトレーニングとして低山登りを始めました。目指すのは高い山ではありませんが日本には美しい山がたくさんあります。”登ってみたい”と”登れる”が合致して初めて目指せる山。その一つが木曽駒ケ岳でした。これからもそんな山を見つけていきたいと思います。

下から見上げる美しいカール
花も満開!

今回の動画をInstagramに掲載しています。そちらもご覧いただければ幸いです。木曽駒ケ岳