北海道・旭岳

低山ハイク

カムイミンタラ

カムイミンタラ「神々が遊ぶ庭」はアイヌの人々にとっては自然の恵みをもたらしてくれる場所でもあり、魔神がもたらす天災が人々を脅かす場所でもあります。人々はこれらの自然の中で崇拝と畏敬の念をもって暮らしています。大雪山ではいまでも、最も格式の高いシマフクロウを神々の国に送る儀式や、山に入る者の安全を祈る祭事を行っているそうです。この地域はアイヌの人々によって聖地として大切にされてきたのです。(一部日本遺産ポータルサイトより引用)

そんな神々が遊ぶ庭へ行ってみたいと思いました。

反省から始める旭岳登山

北海道の山、旭岳登山の記事を書くにあたり、反省から始めなければなりません。

先ずは時期の選び方です。6月中旬の日にちを先にフィックスして黒岳の登山を予定していました。航空券を早々に手配し、レンタカーを予約し、層雲峡付近のホテルも手配して準備万端でしたが、ふと気が付くと黒岳の山開きが6月27日(土)になっており、前日までロープウェイもゴンドラの更新のため運航されていないことが判りました。私達が行く日は山開き前だったのです。

「山開き」は富士山だけと思い込んでいました。下調べが不十分であったのと、北海道という地域に対する知識不足(勉強不足)でした。

さぁ、どうする!です。

ターゲットの山を黒岳から旭岳に変更できるかを検討してみました。先ず旭岳ビジターセンターに電話をして教えを乞いました。先ず言われたのが、「北海道という地域性を考えてください。北海道の2000メートル級の山は本州の3000m級の山の環境に相当します」でした。

様々なアドバイスいただき、行き先を旭岳に変更できそうであると考えました。そして再構築した計画は、旭岳ロープウェイを使って姿見駅まで登り、そこから旭岳山頂へ。そして同じ道を下るいわゆる往復ルートです。お天気がよければ私達の技量でも何とか行かれそうです。

しかし、もう一つのプランであった、旭岳→ 新井岳→ 間宮岳→ 中岳分岐→ 中岳温泉→ 裾合分岐→ 姿見平の周回コースは、この時期はまだ天候や気温によってはアイゼン・ピッケルが必要であることや、天気の急変で道迷いの可能性があると聞きあっさりと断念しました。

黒岳に比べたら少しハードルは上がりますが、登山予定日には旭岳ロープウェイも動いています。幸い山麓の宿泊施設も確保できたので予定通り旭川行きの飛行機に乗り込みました。

天候の急変を実感

前日に現地入りをして、旭岳ビジターセンターに立ち寄り、最新の天気予報や情報を確認しました。予報では登山当日の午前中はお天気が保ちそうです。

その後山麓駅に行き、ロープウェイの乗り場や翌日の混み具合などをスタッフに確認しました。それらを総合して、翌日は6時30分、始発のロープウェイで姿見駅まで行き、登山することに決めました。

山麓駅で下見をして、売店であれやこれやを見ていましたが、ふと外を見ると大雨です。「えっ、いつから?」と思わず声に出すと、「たった今です」と売店の方が答えてくれました。瞬時に土砂降りの雨が降り出し、間を置かず雷が鳴り始めました。そのため、暫く建物内に待機することにしましたが、ロープウェイは運航休止になりました。

大雨と雷は夜半まで続きました。翌日が心配であまり眠れませんでした。

朝5時。カーテンを開けるとまずまずのお天気で薄日も射しています。意気揚々と6時30分、始発のロープウェイに乗り込みました。天気予報があまり良くなかったためか、ロープウェイには十人ほどしか乗っていませんでした。

旭岳越しの朝日
ロープウェイから十勝岳の噴煙が見えました

姿見駅の気温は11.9度。朝日が差し、風もなく絶好のコンディションの中、先ずは雪の上を歩き始めました。雪が残っているのは姿見駅周辺のみで、散策コースの第5展望台の分岐から登山道が始まりますが、こちらは全く雪がありません。

姿見池の先には噴煙が立ち上っている所があります。勢い良く吹き出すいくつもの噴煙の柱は正に地球の息吹を感じます。東に向かって登っているため少しでも顔を上げると朝日が眩しく、先が良く見えませんが、南側に見える山々は緑と雪渓の白が美しいコントラストを描いています。見てみたかった”ゼブラ模様”です。

生きている山を実感する噴煙の横を歩きました

足場はザレていて決してよくありませんが、登山道の幅は広く、両端にロープも張られており危険を感じることはありませんでした。それよりも周囲の景色に圧倒されるばかりです。

8合目で少し休憩をしましたが、南側から駆け登ってくる雲に包まれます。”白雲悠々去り又来る”です。

正面がニセ金庫岩

流れる雲に隠れてはまた顔を出すお日様を見ながらあっという間に9合目、そして通称”ニセ金庫岩”です。

真四角な金庫岩を左手に見て頂上を目指す!と思っているとその手前に同じような四角い岩が現れ、それを左手に見て進むとルートを外れてしまいます。そのため”ニセ金庫岩”と呼ばれているのだと思います。

今ではルートを外れないように注意喚起の標識とそちらに行かれないようにロープが張られているので、まず間違えることは無いと思います。

ニセ金庫岩からほどなく、正真正銘の真四角な金庫岩が現れます。まるでだれかが定規を使って削ったかのようなきれいな四角い岩です。ロープが張られているためすぐそばには行かれません。そしてここから山頂まではほんの僅かな登りです。

こちらが正真正銘の金庫岩
山頂に続く最後の登り

山頂に着くと先ず目に入るのは「一等三角点 選点100年記念の碑」と三角点。そして山頂標識です。

登頂時、山頂からの景色は薄い雲、モクモクとした大きな雲、青空、太陽、周囲の山々とその雪渓。

圧巻の景色は正に楽しく飛び回る神々の姿そのものでした。

裏旭に通じる急下りの道はまだたくさんの雪が残り、登山道を示すロープも半ば埋もれていました。周回コースは到底無理であったと実感しました。

山頂ではご機嫌に遊ぶ神々を感じながら休憩し、おやつを頂き、離れ難い思いで下山を始めました。

登りの際に歩いたザレ石の道、下りはさぞかし怖かろうと思っていましたが、埋まっている岩も多く思いのほか軽快に下ることができました。

しかし、8合目付近から急に雲がかかり、周囲は突然真っ白。先の見通しも悪くなりました。歩く速度を落として、互いの姿が見える距離を保って慎重に下ることにしました。

絶景のなか絶好調で下っていましたが...
流れてきた雲にあっという間に飲み込まれました

散策路まで戻ってくると、周囲は少し明るくなりました。

登山道でもそして散策路にも様々な花も咲いています。チングルマ、エゾノツガザクラ、イワヒゲ、ショウジョウバカマ、キバナシャクナゲなど。そして高い木が無いにも関わらずひっきりなしに鳥の声がしました。

散策路も終盤にかかるころ周囲に雲がかかり、空が暗くなってきました。「ロープウェイ駅まで0.3㎞」の標識を越えた直後から大粒の雨が降ってきました。急いで雨具を取り出し羽織って駅まで急ぎ足で向かいました。登山道で雨に降られなかったのは幸いでした。

ロープウェイで麓まで下りても、雨はまだ激しく降っていました。最後に姿見駅で記念撮影する余裕もなく下りてきてしまいましたが、この日はキラキラと眩しい朝日、流れる雲、突然の霧、眼下に広がるゼブラ模様の雪渓と神々の遊ぶ庭を存分に味わい、楽しんだ登山となりました。

次回は夏の時期に黒岳!と少し欲張りな考えが頭をよぎりました。

今回の動画をInstagramに掲載しています。そちらもご覧いただければ幸いです。旭岳