楽しみにしていたアオラキ/マウント・クック国立公園は雲に覆われていました。
マウント・クックもその姿を見せてくれません。
マウント・クック国立公園内にあるハーミテージホテル名物のパイを昼食に食べてからフッカー・バレー・トラックを少し歩きました。この有名なトラックは吊り橋の工事のために途中までしか行かれません。ハイライト手前で引き返しました。
フッカー・バレーが最後まで歩けないので、代わりにレッド・ターンズ・トラックを歩きました。
レッド・ターンズ・トラック。 麓の登山口、標高730mから見晴台がある1,030mまでの2.2㎞を登ります。
僅か300mの登りですが、歩くにつれて周囲の山々とU字谷が眼下に広がっていきます。麓からでは見られなかった雄大な光景です。
途中、はちみつで有名なマヌカの木には可憐な小さな花がたくさん咲いていました。初めて見るマヌカの花です。


登山道は整備されており、所々階段状になっています。歩きやすい道ですが、なかなかの急こう配を登って行きます。
ゴールまでもう少し、という所で登山道の道端の岩に女の子が座っており、その横にはお母さんが見守るように立っていました。
岩に座って足をぶらぶらさせ、額に汗をかいて、見るからに”もう疲れちゃった”という表情の少女。お水のボトルを差し出しながらニコニコと見守るお母さん。
「もう少しみたいよ。頑張って!」と声をかけて通り過ぎました。
見晴台からの景色は素晴らしく、来た道の方角を振り返ると、氷河で削られた谷底にある村とその底地に沿って連なる山々。反対側には見晴台から更に上に続くガレ場になった山の斜面が聳えています。

景色に見とれていると、先ほどの母娘が登ってきました。少女は元気を回復していました。そして、見晴台に着くとそこにあったベンチの上に飛び乗って、叫び始めたのです。
「ケア~、ケア~」とどうやらケアを呼んでいるようです。どちらかというと「キャ~」に聞こえる呼び声でずっと叫んでいます。
飽きることなく、5分も呼び続けていたでしょうか。
実のところは、”まだ諦めないのね・・・”と苦笑いしていました。目が合うと、お母さんも苦笑いしながら肩をすくめています。でも真剣で諦めないその姿がいじらしくもありました。
こちらがそろそろ下山の準備をしようかと思った時、お母さんが「見て見て!」と駆け寄ってきました。「ケアよ!」と。
”まさか!?”です。お母さんが指さす方向を見上げると山側の上空に2羽のケアが飛んできて旋回しています。それはあたかも、「聞きなれない声だけど、呼んでいるのは誰かな?」と呼び声の源を確認しに来たかのようでした。皆大興奮です。
ケアは高度を下げることなく、暫くの間頭上を悠々と旋回して状況確認をしています。少女は呼び続けています。
2羽のケアは呼び声が少女であると確認したのでしょうか、更に暫く旋回を続けた後でまた山の向こうに飛んで行ってしまいました。
僅か数分の出来事でしたが、飛んで行ってしまった後も少女は興奮した様子で空を見つめていました。
胸が熱くなる感動のシーンでした。


自分の呼び声に来てくれたケア。少女はこの体験と感動をきっと一生忘れない事でしょう。そして好きなだけ叫ばせて、それを辛抱強く見守り続けたお母さん。きっと私なら「もういいんじゃない?」と言ってしまいそうです。
この感動に何かお礼がしたくて、「ケアを見せてくれてありがとう」と日本から持参していた”キットカット濃い抹茶味”をプレゼントしました。頬張る少女は嬉しそうでもあり、誇らしげでもありました。何よりもお母さんがとても嬉しそうです。
フッカーバレー・トラックの”代わり”に登ってきたレッド・ターンズ・トラックですが、忘れられないトレッキングになりました。
ケア(AIによる概要は以下の通りです)
ケア(Kea、ミヤマオウム)は、ニュージーランド南島の山岳地帯に生息する、世界で唯一の雪山に暮らすオウムです。4歳児並みの知能を持つとされ、道具を使いこなすほど賢く、イタズラ好きで知られています。全身はオリーブグリーンで、羽の裏側の鮮やかなオレンジ色が特徴です。
ケア(ミヤマオウム)の主な特徴
- 別名・別称: ミヤマオウム(深山鸚鵡)、キアとも呼ばれる。
- 賢さと性格: 非常に好奇心旺盛で、人間のリュックのジッパーを開けたり、車を突ついたりするいたずらで有名。
- 生息地: 南島の上高地、特にアーサーズパス周辺で見られる。
- 保全状況: 絶滅危惧種に指定されており、個体数は約5,000羽程度と推定されている。
ケアについては、この後別の場所でそのイタズラぶりを目の当たりにすることになりました。


